同窓生の活躍

入学前の選択肢に無かった高校教師に
教育実習での目覚め

今回ご紹介する 鵜飼涼太(うかいりょうた、50期・総合理工)さんは、本学卒業の教員ですが、理工学部出身の通信制課程高等学校教員です。入学時は教員志望ではなく、挑戦ときっかけの積み重ねにより今があります。どのような思いで教壇に立っておられる(またはリモート画面に向かっておられる)のかうかがいました。

 

<高等学校通信制課程の理科・数学教員> 

― 本日はよろしくお願いいたします。7月~8月は通常は夏休み期間ですが、通信制課程でも同様でしょうか。

鵜飼 本校の通信制課程にはいろいろな登校スタイルがあり、生徒たちは自分に合ったスタイルで登校します。オンラインスタイルであっても8月にスクーリングで対面授業を受けます。そのスクーリングも担当していますし、通常スタイルで登校の生徒の補習も行います。

― 生徒さんは夏休み期間にも登校しなければならないのですね。先生もお忙しいですね。

鵜飼 年間を通して生徒が登校してきますが、部活動の指導はないので、残業は少ないです。

校舎での講義中(理科実験)
身近な器具・試料を用いた実験を実施。
高度な実験でなくても楽しんで取り組む生徒が多い。

― ところで、本学には教育学部がありますが、鵜飼さんは理工学部で教職課程を履修されました。

鵜飼 理工学部でも、教員を目指して教職課程を履修する人はかなりいます。そのような人は入学前から教員を志望するようですが、私は入学前には教員になるという考えはありませんでした。

入学時、両親から「教職課程があるなら教員免許状を取得しておくとよい」とアドバイスを受け、数学と理科の2教科の資格を目指して受講することにしました。

転機は教育実習でした。卒業後の進路に教員という選択肢が芽生え、4年生で東京都の教員採用試験を受験しました。

― 通信制課程の教員になろうと思ったきっかけは。

鵜飼 都の採用試験では2次試験まで行ったのですが不合格となりました。勤労奨学生注*として勤務していた明星大のキャリアセンターで、私立高校の求人もあることを知っていたので、職員の方に相談しました。

*学生に有効な経済支援を行うために、明星大学の理念である「体験教育」や「実践躬行」を具現化した、学内の実務体験を伴う給付型の奨学金制度(明星大学大学案内 2024 より)

その時まで通信制課程という選択肢はなかったのですが、現在の学校法人日本航空学園(理事長 梅沢重雄 8期・心教)を紹介していただきました。応募した当時、東京キャンパスセンター長は明星大出身の佐藤美文先生(39期・心教 現 日本航空高等学校 山梨キャンパス 全日制課程校長)でした。お話をうかがう中で、全日制よりも、挫折したり困難を抱えていたりする生徒に対してダイレクトに関われると感じ、ここで教員として働きたいと思いました。

― 通信制課程というと、どのような生徒さんがおられるのですか。

鵜飼 体調不良など様々な事情で通常の高校に通うことが困難な生徒たちです。ただし、中には自分の得意分野に打ち込むために自分の時間が多く取れることや、自宅で時間割に縛られずに学習できることをポジティブに考えて在籍している生徒たちもいます。クリエーターや芸能界を目指したり、スポーツに打ち込んだり、また海外留学を考えている生徒、さらに高卒資格を持たない社会人の方や海外在住の方も在籍しているなど、年齢も背景も多様です。

― 学校名から航空業界で活躍しようと入学される方もいるのではないでしょうか。

鵜飼 その教育にも力を入れていますが、専門職として就職するためには専門学校で学ぶ必要があります。本校で基本的なことを学び、実習などは系列校で行います。志望が固まったところで系列の大学校などにつなげるようにしています。

― コロナ禍(新型コロナウイルス感染症まん延時)にどのように対応しておられましたか。貴校では、当然遠隔授業などのノウハウを既にお持ちだったので、それほど混乱はなかったように思いますが。

鵜飼 コロナ禍以前から通信制課程の課題であるレポートはオンラインで提出ができるようにしていたため、自宅での自主学習はもともとできる環境にありました。

授業においては登校の形から遠隔の形に切り替える必要があったため、緊急事態宣言後、早い段階でオンラインツールを導入し、その期間中はオンラインでの授業を行う形で再開しました。

どこの学校でもあったと思いますが、対面授業と違い生徒の様子が把握しづらく、導入したオンラインツールに教員も生徒も使いこなすのに苦労をしました。

しかし、チャットツールを導入したことで、コロナ禍以前よりも生徒と連絡を取りやすくなったり、授業内の課題やアンケートの集計がやりやすくなったりと良かった面もありました。

― なるほど、通信制課程の強みが生きていますね。ところで、多様な生徒さんたちに接して、教員というお立場からどのようなことを感じておられますか。

鵜飼 挫折を経験した生徒もおり、卒業の時にそのような生徒たちの笑顔を見るのがうれしいです。決して求めているわけではないのですが、結果として生徒から「ありがとう」と感謝されると、いろいろ大変なことがあったとしても、もっと頑張ろうと思えます。

これからも頑張って、教育に生涯をかけて関わっていきたいと思います。

<充実したキャンパスライフ>

― 在学時代についてうかがいます。まず初めに、理工学部総合理工学科環境・生態学系に入学された理由は。

鵜飼 高校が科学技術科という理系の学校で、そこでETという環境について学ぶ分野を選択していたので、環境について学べる大学・学部を探して、明星大を一般受験しました。

― それまで明星大のことはよく知らなかったのですか。

鵜飼 オープンキャンパスにも参加しておらず、明星大のことはよく知らず入学しました。はじめのガイダンスでクラス分けの試験があり驚きました。

― 入学していかがでしたか。

鵜飼 1年生の時に「夏休み科学体験教室」(理工学部主催)で近隣の小・中学生に科学の面白さを体験してもらいました。その時の指導教員は田中修三(理工学部教授 たなかしゅうぞう)先生でした。

2017年3月24日学位記授与式後学内で指導していただいた田中先生と

田中先生には、4年生の卒業研究でも大変お世話になりました。教員採用試験の受験があったので本格的に卒業研究を始めるのが遅くなったのですが、先生のおかげで卒業論文をまとめることができました。

 

― どのような研究でしたか。

鵜飼 バイオエタノールについての研究です。最終的には廃材などの木質バイオマスを材料に、糖化と発酵を同時に行う並行複発酵を利用してバイオエタノールを作る基礎研究でした。

 

― 4年生までしっかり学習し最後に卒業論文をまとめられたのですね。

鵜飼 入学時から、良い成績を取りたいと思い講義をしっかり受けました。明星大には特待生奨学金の制度があり、結果として選ばれてうれしかったです。

また、専門関係の国家試験にも挑戦しました。3か月くらい必死に勉強して4年生の時に環境計量士(濃度関係)試験に合格しました。当時、明星大では学生に資格取得を奨励しており、試験合格によりお祝い金をいただきました。

 

<様々な学習を体験>

― 専門はもちろん教職課程も履修され、忙しい学生生活でしたね。先ほど勤労奨学生であったとうかがいましたが、何年生の時ですか。

鵜飼 1年生から3年間ずっとキャリアセンター勤務です。ここでもいろいろな学びがありました。おかげで、1年生からインターシップに参加しました。その後、学系でのインターシップにも参加し、いろいろな会社を体験しました。

平成27年度東京学生柔道体重別選手権大会出場
右から2人目が鵜飼さん、右端は(故)物江毅監督(9期・経済)

― それはよかったです。他にも課外活動をされましたか。

鵜飼 柔道部に所属していました。大学に入学してから始めたのですが、部員が多くなく丁寧に指導していただき二段までいけました。もっと上を目指したい気持ちもありますが、卒業後は稽古する時間が取れていません。

柔道部は同窓生のOB・OG会もあるのですが、なかなか時間が取れず、出席していません。

他にもアルバイトしたり、学外で小学生の時から続けているボーイスカウト活動もしたりしていました。18歳以上は呼称がローバースカウトとなり、同じ団や地区のスカウトと野外活動や奉仕活動を行う他、自身の団の下の世代の活動の補助も行っていました。

 

― とても充実した学生生活でしたね。特に印象に残っていることは何でしょうか。

鵜飼 学生生活締めくくりの学位記授与式(卒業式)で、学系代表として学位記を授与されるという大役を果たしたことです。

 

<最後に>

鵜飼 後輩に対しては、遊びでもいろいろ学べるかもしれないのですが、在学中という自由な時間を使って、いろいろなことへチャレンジすることを薦めます。新しい自分を見つけて将来の自分に生かしてほしいと思います。

2019年9月 埼玉で環境・生態学系同期とバーベキュー
学生時代の話や仕事・近況の話に花が咲いた。

最初は何も知らずに入学したのですが、そこで知り合った友人・先生・職員の方々に支えられて今の自分があるのだと思い、感謝しかないです。今後、ますます明星大が発展することを願っています。

― スクーリング準備前のお忙しい中、お話を聴かせていただきありがとうございました。これまでになく暑い夏が続くようです。お元気でご活躍ください。

2023.7.29(遠隔インタビュー)

鵜飼涼太
(うかいりょうた50期・総合理工学科
(環境・生態学系)2017年3月卒)
学校法人日本航空学園
(理事長 梅澤重雄 8期・心教)
日本航空高等学校 通信制課程 教諭
明星大学学友会体育会柔道部OB(柔道二段)
一般社団法人明星会 明星大学同窓会代議員
(個人情報保護委員会副委員長)

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