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運命を決めた1本の電話から明星幼稚園の園長へ

人文学部心理・教育学科教育学専修へ1983年に入学、1987年に卒業(20期)された渡邊智恵子(旧姓 中原)さんをご紹介します。渡邊さんは小学2年生の時に教員となることを目指され、その思いを貫き、大学時代は勉学に励み、その努力とお人柄によるご縁で卒業2年目から明星幼稚園の教諭へご就任。キャリアと功績を積み重ねられ、現在は園長としてご活躍中であり、明星学苑評議員も務められています。

教員になりたい!

きっかけは小学2年生の好奇心からです。通学していた小学校が教員養成のために教育実習生を数多く受け入れていて、最終日に実習生(女子大学生)が、感動のあまり号泣していた光景が心に響き、「教員という仕事は、そんなに素敵な仕事なのか。ならば自分も教員になりたい!」という心が芽生えた衝撃的な瞬間から始まりました。

 

将来の夢を小学校教員と定めて大学受験

大学受験を迎えるころも「教員になりたい」という気持ちは揺るぎませんでした。志望校を選択する上で、当時は小学校の教員免許が取れる大学は、圧倒的に国立大学が主で、私立大学では明星大学を含め、数校しか存在しませんでした。その中でも小学校教員を目指せる学部学科の編成が強固に整えられていた、児玉九十先生創設の明星大学だからと両親の後押しもあったことで進学を決め、夢の実現に向けて一歩前進しました。

 

大学生活を謳歌する華やかな学生たちに惑わされず真面目に勉強しました

教師になる!その決意で教室の前方に座って講義を受け続けました。小学校教育と同様に幼児教育にも興味があったので、同時に教員免許が取得できる授業を選択いたしましたら1時限目から5時限目までコマ数は多数。また自宅がある東京練馬区から東京都のほぼ半分を横断、新宿経由で大学までの通学は往復3時間ほど。そして授業終了後は教員となるためにスイミングスクールへも通う。また学費のために自立心を磨きながらアルバイトにも精を出さないといけない。かなり多忙でしたが、大学外での学習で、教授から紹介された学校や施設、また友人の先輩が働いている養護施設の視察などへは積極的に参加しました。

このような生活だったことで、部活やサークルには所属しませんでしたが、お互いに教員を目指す、いわば同志で心優しい気が合う多くの友人たちと巡り合うことができました。その友人たちと昼休みには学食や明星坂の両側にあった飲食店(当時)でテレビを見ながらランチをしたり、時には痛ましいニュース(事件)について、お互いに涙を浮かべながら意見や情報交換をし合ったり。そのような日々で培ったことは園長となった今でも活きています。

 

尊敬する恩師 岡田正章(おかだまさとし)先生との出会い

岡田正章先生(人文学部長歴任・勲三等瑞宝章受章)は幼児教育の権威でいらっしゃいました。ある授業で岡田先生からお声掛けをいただきました。それは入学当時、教育界のトレンドで米国の臨床心理学者トマス・ゴートン博士が開発した「Parent Effectiveness Training親としての役割を効果的に果たすための訓練」、これを日本では「親業(おやぎょう)」と呼び、コミュニケーションプログラムで親を対象とした講座が広められていた時で、この活動を私の母が手伝っており、大学入学時に提出した書類で親の職業欄に書いたことがきっかけで、岡田先生が授業の中で「親業(おやぎょう)」を話題にしてくださったのだと思います。

また当時は校内暴力や非行が社会問題化し、「親」と「子」との信頼関係を考え直す機会を与え、社会現象化した時でもありました。

 

大学3年生からは迷わず岡田ゼミに籍を置きました

今思えばこのころから気持ちは「幼稚園教諭」に傾いていったのかもしれません。ゼミは大学の教室だけではなく、時には岡田先生のご自宅で開講され、そのたびに奥様はゼミ生に手料理を振る舞ってくださいました。その時の若い私は、とてもわくわくしていたことを思い出します。

大学4年生になると岡田先生のご指導により深く興味を持った「親業」。これと関連して日本で初めて開講された教師と生徒のコミュニケーション、学級運営にフォーカスした「教師学」講座を、日本全国の小中高の先生方と一緒に受講し刺激を受けました。これが私のコミュニケーションの礎となっています。

そして教育実習は東京都23区内の小学校で実習し、夏休みには小学校のプール教室で指導員もして、いざ東京都の教員採用試験に立ち向かった結果、合格できました。

 

東京都の小学校教員採用試験に合格し大学卒業、夢は膨らんだけど・・・

社会人1年目、晴れて教員免許も取得し、ここまでは夢を実現させましたが、3月に卒業して翌4月から小学校の教壇に立てた訳ではなく、採用待ちの身となりました。当時は人口密度が高い団塊の世代と呼ばれた先生方が多数勤務中であり、さらに教員志望の学生数も増加傾向で教壇に立つための競争率は高く難関でした。退職者が出なければ、ひたすら採用待ちの毎日で、やりきれない気持ちが続きました。

この間を利用して東京23区内の公立小学校で併設されている支援学級の指導補助員として、不登校の生徒を受け持ち、1対1で寄り添いました。同時に世間の現実も知りました。指導補助員をしていた当時の地域では、貧困や格差により、クラスの半数が給食補助の受給を受けていて、23区内では高く、さまざまな家庭を目の当たりにした密度が濃い1年でした。

並行して都内の小学校の採用面接も受けましたが、当時は学級崩壊が問題視されていた時代でもあり、採用は男性が優先され、悔しさも経験しました。

 

運命を決めた1本の電話

採用待ちの最中、恩師の岡田先生から自宅へお電話を頂きました。「明星幼稚園の園児数がこれから増える。だから教員2名を新規採用したい」との内容で誘いを頂きました。その時に私は「ピアノがちょっと苦手で・・・」と申し上げたら岡田先生から「必要に応じて努力しなさい!」と一喝され、一晩考えて翌日、岡田先生へお返事を致しました。季節が秋となったころ、私は明星幼稚園を初めて訪問し、翌年度から明星幼稚園での人生がスタートしました。

 

 

駆け出し教諭の毎日は悪戦苦闘

ある日、園児たちへ「みなさん、並びましょう!」と声を掛けしても言うことを聞かない。見かねた園長(当時は主事)の白川晶山(しらかわしょうざん)先生から、「園児は常に教諭を見ている。だから触れ合って伝えることが大切」だと。そこで私は指導補助員の時に1対1で寄り添った知識をフル活用させ、教諭像をイメージし毎日実行。結果、手ごたえをつかみ、園長となった今もこの経験を後輩教諭へ継承し、未来へつなげる努力を惜しまないことを日々の基本姿勢としています。

 

 

明星幼稚園と人生を共に

明星幼稚園の教諭として1988年から担任17年、教務主任6年、そして2012年に園長へ就任して11年目となり、今年で34年目となります。私の人生の半分は明星幼稚園と共にありました。私が駆け出しだったころに卒園した方々が、近年では園児の保護者となり、幼かった当時の面影を残されながら、立派なお父様、お母様となられ、子育てに励んでいる姿と出会えることは、大変嬉しいことです。

私の教員人生は、平坦なことばかりではなく、正直、苦しい時もありました。でもそのたびに幼稚園の子どもたちの姿に癒され、励まされてきました。だから私も出会った全ての子どもたちの現在と将来に渡る人生が、よりよいものとなり、幸せに生きていくことができるように力を注いで勤務しています。

私は30代前半で1度、産育休を取得し現場を離れ、息子が生後10カ月で復帰しました。息子を保育園に預けての勤務は、両親の協力や周りの人々の励ましがあったから成し得たと感じております。出産、子育て、教員として得た経験や知識、これらは相互に影響し合うことができ、時間的な制約があった中でも、振り返ると私の教員としての成長にとって、豊かな経験だったと感謝しております。

 

 

渡邊さんが園長を務められている明星幼稚園は、府中校の開放的でのびのびとした環境の中にあり、2007年にはドラマ「暴れん坊ママ(フジテレビ系列)」の撮影現場として、誰もが知っている大俳優の方々が直接来園され、教諭、父親、母親の配役で、校舎・教室・園庭で撮影し放送されました。

 

教員を目指す在学生・近年卒業して教員になった皆さん

現代、若い教員の離職が著しいと言われていますが、教員になりたいと思って教育実習という教員の世界へ足を踏み入れた時点で、あなたには教育者となる資格と責任があります。学校現場では一言では言い表せない様々な壁にぶつかるでしょう。でもその壁はあなたに課せられた人生経験であり、学びのチャンスなのです。あきらめずに教員の道を突き進んでいただきたい。その過程の中で足りない知識や経験はその都度、足していけばいい。大切なことはあきらめないこと。教員となったら、まず3年間は頑張る。その後は必然と4年目が訪れる。その時のあなたは教員の奥深さに気付き、あなたにとって教員は天職となっていることでしょう。「健康・真面目・努力」私はそのように信じています。

 

 

1987年人文学部心理・教育学科教育学専修卒(20期)
学校法人明星学苑明星幼稚園 園長 渡邊 智恵子(わたなべ ちえこ)
旧姓 中原(なかはら)
学校法人明星学苑評議員

https://www.meisei.ac.jp/kg/
https://alumni-meisei.jp/20220523-2/
https://www.meisei.ac.jp/100th/school/kg.html

「インタビュー:広報部26期・社会 後藤 信夫」

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